スペシャルティコーヒー豆 AKAGAWA

旧西ドイツ発祥のセルフコーヒーショップ

1979年2回目の海外、初めてのヨーロッパ。 コーヒー消費の先進国西ドイツを始めとし、フランス、スイス、オランダ、ノルウエー5ヶ国を回る。

当時の日本はまだセルフのコーヒーショップはなく、喫茶店、コーヒー専門店が隆盛の時代であった。 コーヒーの消費量も200万俵(1俵60kg)ぐらいであったが、 西ドイツが600万俵も消費しており、 西ドイツのコーヒー市場が我が業界の関心事であった。 そこでこのツアーが企画され参加する。

西ドイツのハンブルグ市を訪れ、現在の日本の様に街の至る所にコーヒーショップがあるのに驚く。 店内は簡素な作りで、コーヒーの挽き売りカウンターとセルフのコーヒーカウンターだけで、 イスはなく皆立ち飲みである。 コーヒー一杯が当時の円に換算して50円くらいだったと思う。

メニューもアイテムが少なく、ドリップコーヒーが主流であった。 何軒もの店を回ったが、次から次とお客が押し寄せ、コーヒーを立ち飲みし短時間で帰る。 それにしても50円で経営が成り立つものなのか不思議に思う。 聞いてみると、あくまで主流はコーヒー豆を販売することにあり、 コーヒーを安く飲ませることは一種の販促活動の一環である。

当時の大手は<チボー>、<エドショー>の2社がダントツであったが、 現在は状況は良く分からないが、チボー社はないらしい。 その25年後の日本は現在、ドトールコーヒーが約1000店、 スターバックスが500店で圧倒的なシェアを誇る。

約3週間の視察中、同室の一人の男に出会う。 彼が現在のドトールコーヒーショップの礎を作った男<永嶋万州彦>氏である。 彼は現在<有限会社永嶋事務所>を主宰し、コーヒー業界各社の顧問や新業態開発などの仕事の携わり、 あらゆるジャンルの業界から引っ張りだこで、講演や社員教育、訓練で日本中を飛び回っている。

永嶋氏と筆者 永嶋氏と筆者(左)

当時私が26才で彼が30才くらいだったと思う。 ツアー中いつも同室で、これからの日本のコーヒー業界がどうなるのか良く話し合った。 彼はこのツアーで西ドイツのセルフカフェをよく勉強し、 帰国後日本でセルフカフェを立ち上げる命を会社から受けてきており、全てに真剣であった。 私はせっかくビールの美味しいドイツに、ワインの美味しいヨーロッパに来たのであるから、 自由時間さえあればビールを飲みに、ワインを飲みに行きたく彼を誘うが、 3回に1回くらいしか乗らない。 チョト用があるからと一人で出かける。 あとで気が付いたが、常に彼は街を彷徨い、コーヒーショップを、レストランを渡り歩いて、 メニューを、システムを、店舗デザイン等を勉強していた。 それが彼の血となり肉となって、帰国後の活躍に現れる、

現在の日本のセルフカフェやべーカリーカフェの礎を築いたのは永嶋万州彦氏であることは業界の衆知の事であり、 今後も新しい業態開発に教育、訓練にと日本のコーヒー業界を先導すべき活躍して貰いたい。

彼は涙もろくて義理人情に厚い男。そんな古いタイプの男が常に新しいこと挑戦する、そんな人が少なくなった。

ところで現在のコーヒー業界の現状はどうだろう。 喫茶店やましてコーヒー専門店などはなくなった。 たまに見つけても定食屋の現状である。 コーヒーを飲むのならセルフのコーヒーショップが至るところにある。 誰もコーヒーを飲むのにわざわざ喫茶店には入らない。

ちょっと、おかしいとは思いませんか? 喫茶店はコーヒーを飲ませて商売が成り立つところのはずが、 コーヒーはそっちのけで、冷凍食品やインスタント食品でレストランの真似事をしている。 ランチ時は繁盛しても本来のコーヒーだけを飲みに入るお客はいない。 コーヒーマシンを使って抽出し、何時間も経った、酸化した味も香りもない、 ドロドロしたコーヒーを平気で出す。 店は汚いし、スタッフは愛想が悪い。 これで喫茶店が繁盛する訳がなく、自然淘汰は当然である。

その点セルフのコーヒーショップは、明るく清潔で愛想も良い。 コーヒーは回転が速く、味もそこそこで、値段も安い。これでは勝負にならない。

喫茶店とはどんな業態店よりも
美味しいコーヒーを飲ませる所である。

その原点に帰り、もう一度コーヒーを見直すべきである。

  • * 高くても美味しいコーヒーを仕入れる。
    一杯当たり40円も出したら最高のコーヒーが買える。
  • * お客様からオーダーを貰ってからコーヒーを抽出する。
  • * ブレンドは2〜3種類、ストレートも5種類は常時置く。
  • * ブレンドくらいは自家焙煎し、炒りたての香り立つコーヒーを
    出す。(100gくらい焙煎できる機械は3〜5万出せば買える。)
  • * 一杯のコーヒーを提供するのに時間と手間を惜しまない。

以上の事がセルフコーヒーショップが絶対出来ないことであり、 喫茶店のやるべき事で、喫茶店で生き残るための義務であり<強み>である。 これからは熟年層が多くなり、そういう喫茶店が求められる時代が必ず来ると思う。

美味しいコーヒーとは新鮮で香り立つ、
真心を抽出したコーヒーである。

記:2004年6月

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