スペシャルティコーヒー豆 AKAGAWA

有機栽培コーヒーを求めて

はじめに

1998年、当時有機栽培の農作物が話題になり、当然コーヒーも市場に少しずつ出回ってきた。 有機栽培のコーヒーはどういう分けか美味しくない。 価格は高いが味覚的には、どちらかというと不味い。 必ず美味しい有機栽培のコーヒーがあるはず。 それでは探しに行こうとなり、浅原(丸紅食料)、 荒川(ザ・コーヒービーンズ)、 小林(ミカド珈琲)、 私の4名でコスタリカ、ブラジルの旅に出発する。

コスタリカ

首都サンホセから車で8時間、パナマ国境に近いアミスタッドコーヒー農園に向かう。 この農園はジャングルに囲まれた国立自然公園の中にある。 野生動植物の宝庫でありエコツアー客用のホテルを兼ねた施設が農園内にあり、そこで一泊する。 施設の裏はジャングルの密林で、前は見渡す限りのコーヒー農園である。 施設の食べ物は野菜から、果物、魚まで全て農園内で栽培、養殖されていた。

優等生の農園

コーヒーは全て有機栽培で、肥料は鶏糞を使い、 コーヒー樹の剪定した幹、枝、葉を全て肥料とし土に返している。 農園自体がジャングルに囲まれており、他の地域と隔絶しており、 農園内の全て、土、水、作物が有機化していると農園主は豪語していた。

確かに私の見る限り有機栽培コーヒーの農園としては優等生で文句の付けようがない。 コーヒーも期待したとおり大変美味しく、アメリカの有機栽培認定協会の認定書もあった。

コーヒー樹も青々と葉が茂り、青みがかったコーヒーの実がビッシリと付いており、 コーヒー樹の高さも綺麗に統一され、樹と樹の間隔も整備され、 有機栽培はともかく一般のコーヒー農園としても素晴らしかった。

有機栽培コーヒーを探しての旅は、想像以上の感動と成果であった。 価格は一般のコスタリカコーヒーからすると倍以上したが、 味覚的にも納得し、是非とも日本へ帰ったら販売しようと決信してコスタリカを発つ。

剪定され高さが揃えられたコーヒー樹 コーヒー樹の高さは収穫しやすいように剪定されている。 後方の高い木はシェードツリー。低い方がコーヒー樹。

ブラジル

5回目のブラジル訪問である。 今回は有機栽培コーヒーを探すのが主目的である為に、 一般の農園は訪問しないで、サンパウロ州と南ミーナス州の州境の モジアナ地区のモッコカ町にあるサント・アントニオ農園を訪問する。

コスタリカで素晴らしい有機栽培コーヒーを見つけたので、 これ以上のものはないと期待はなく、とにかくアポイントを取ってある以上訪問しなくてはと思い、 軽い気持ちで農園に向かう。 案の定農園内にはいると、コーヒーの樹が見えてきたが、 今までに見たどの農園より、荒れてみすぼらしく、 手入れも全く行き届いていない、とにかく農園主に会う為園内の自宅に向かう。

農園主ジョン・ネット氏はイタリア系の5代目で、 建物は大変古いが、頑丈な建物で素晴らしい建築物である。 我々の為に昼食を用意しており、さっそく御馳走になる。 全てブラジルの田舎料理だが大変美味しかった。 食事をしながらジョン・ネット氏から話しを伺う。

サント・アントニオ農園主の住宅 サント・アントニオ農園主の住宅。1830年に建築された。

ジョン氏独特の栽培方法

1.農薬散布をやめる

長い間の農薬散布で農園労働者の家族に、身体に異変が感じられるようになり、 農薬の使用を1986年頃からやめる。

2.超密植栽培

コーヒーの栽培は一般的に1ヘクタール当たり、2000から2500本のコーヒー樹が植えられており、 コーヒー樹と樹の間隔も2mから4m間隔である。 それがサント・アントニオ農園では1ヘクタール2万本のコーヒー樹が植えられていた。 樹の間隔も30から40cmくらいしかなく、整然と並んだ畝もなく、 人が腰を屈めてやっと入れる様な状態で、まるでジャングルである。

超密植栽培のコーヒー樹 超密植栽培で1ヘクタールに20,000から26,000本のコーヒー樹が植えられている。

3.肥料も一切やらない

1994年に霜害があり、この地域のコーヒー樹が全て被害に遭う。 他の農園はコーヒー樹を抜き他の作物に転換したが、 ジョン・ネット氏は金銭的に余裕がなく、 コーヒー樹を抜く事も転作する事も出来ずに途方に暮れていたが、 一年後枯れて死んだと思っていた樹から新芽が出てきた。 この時から自然の素晴らしさに目覚め、農薬も肥料も一切使わなくなった。

4.収穫もしない

コーヒーは花が咲いてから6から8ヶ月で実が赤く熟し、収穫する。 ところがサント・アントニオ農園では実が赤くなっても収穫しない。 実が熟し赤い実が黒くなって自然に落下仕切るまでほっておく。 3ヶ月くらいかかって全部のコーヒーが樹から落ちると、 下に落ちたコーヒーを掻き集める。 これが世間で言う収穫である。 今まで聞いたことも見たことも無くただ唖然とする。

5.下に落ちても腐らないコーヒー

当然最初落ちたコーヒーと最後に落ちるまで3ヶ月くらいかかるはずで、 一般常識からすれば早くに落ちたコーヒーは腐るはずであるが、 実際に見てみるとカビにおわれて真っ白くなっているが、中の実は臭いを嗅いでみても腐っていなかった。

6.一切手入れをしないコーヒー樹

普通はコーヒーを収穫しやすい用に、コーヒー樹の高さを一定に保つため剪定をする。 また下草なども刈り込んで手入れするのが常識だが、サント・アントニオ農園ではコーヒー樹は延び放題である。 どうして剪定しないのかと聞くと、収穫しないのだから樹が何処まで延びようと勝手である。 なるほどそのとおりである。

7.自然界の摂理

超密植植えで、コーヒー樹は延び放題。 従って太陽の光はコーヒー樹の地面まで届かない。 光が差さないと雑草は生えない。 いつもジメジメしており、コーヒーの葉や光の届かない枝は枯れて、 全て下に落ち腐葉土化し、養分となり自然に帰る。 従って光も差さないジメジメした腐葉土内には、微生物が繁殖する。 微生物には良い微生物と悪い微生物がおり、その拮抗がものを腐らせない。 農薬や肥料を与えると良い微生物が減り、悪い微生物が増えると、病気が発生したり物を腐らせる。

太陽の光が届かないコーヒー樹の株元 太陽の光が届かない地面には草も生えない。落ち葉や枯れ枝に覆われ、これらが自然の堆肥になる。

8.自然農法

ジョン・ネット氏は自然のサイクルに目覚め、 人の手を加えたり化学肥料や農薬を散布する事で自然のサイクルを人間が壊していると気付く。 有機栽培も人間の考えた栽培方法で、農薬や化学肥料を使わないだけで、 収穫に手入れに樹の植え方にと全て人間が管理し自然を操作している。 ジョン・ネット氏は自然は強い、 そこに人の手(農薬や化学肥料、樹の剪定、機械化)が加えられると自然のバランスが壊れ、 それを保つにはもっと強い農薬や沢山肥料を使わなければ成らなくなる、と言う。

農薬を使わないと、小鳥がコーヒーの枝に巣を作り、蜘蛛が巣を作り、蝶々が舞う。自然の命が宿ります。
農園主のジョン・ネット氏

自然農法を実施するには、相当の信念(覚悟)が必要である

なぜなら確立された栽培方法ではなく、必ず収穫量があるか、病害虫の被害は防げるか、 なんの保証もないからである。

店の売れ行きNo.1<モッコカ>

ジョン・ネット氏のサント・アントニオ農園の自然栽培コーヒー<モッコカ>は、 酸味も苦味も少なく大変まろやかで身体に優しいコーヒーであり、 初めて来られるお客様には、まず最初にお薦めします。 皆さん本当に飲みやすいと、当店の一番人気商品になりました。

記:2005年1月

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