スペシャルティコーヒー豆 AKAGAWA

牛乳から生まれたコーヒー

さて、先輩達のいなくなった工場で、長年続いたこの会社のブレンドコーヒーの味をどうやって造っていくか、 毎日毎日が自分との戦いである。 造って出荷すればクレームの連続(まずい)である。 それにはまず、ストレートコーヒーのオリジン別の味を知らなくては、ブレンドは出来ない。 ブラジル、コロンビア、グァテマラ、モッカなどの味の特徴を知るべく、 仕事が終わり社員が帰った夜9:00頃から、機械の止まった静かな工場で一人コーヒーのカップテストをする。 何日か続けるとブラジルは(酸味も苦味も軽くてブレンドの柱になる)、 コロンビアは(酸味が強いがコクがある、グァテマラは(軽い酸味とマイルド感がある)、 モッカは(強い独特の香りがある)などが判別出来るようになり、 この組み合わせがブレンドの味を左右するのでは無いかと、うっすらと分かりかける。

それではどういうブレンドの味が一般的に、巷で美味しいと評価されているのか、 営業の先輩達に有名なコーヒー専門店を聞く。 銀座のランブル、新橋地下街の楡の木、目黒のコーヒー野郎などを聞き、さっそく休日に飲みに出かける。 ランブルは(布ドリップによる一杯抽しの大変苦味の強いコーヒー)、 楡の木は(大量のドリップ落とし)、コーヒー野郎は(サイフォンによる一杯抽て)をしており、 味も各店まるで違う。 これではかえってブレンド造りのコンセプトが分からなくなり、また深い溝に落ちる。

さて、どうしたら自分流のコーヒーが造れるか毎日悩む。 コーヒーは飲み物であるから、何が一番飲まれているか考えると<水>であることに気付く。 どうしてこんなに飲まれるのか考えてみると、味が無いからだと思う。 それでは自分が作るコーヒーもほとんどの人が飲みやすいコーヒーにすべきと気付く。

しかし水では味がなさすぎである。 では味があるものでほとんどの人が飲むものは何か?<牛乳>に気付く。 これをコーヒーに置き換えると<酸味も少しで苦味も抑えマイルドなコーヒー>。 これを自分の作るコーヒーの基本コンセプトにしようと、ようやく先が明るくなる。

ブラジルの中性的な味を中心に、グァテマラの軽い酸味を生かし、サルバドルのあっさり味を加え、 ジャバロブで味のバランスをはかり、<マイルドブレンド(MR)>を完成させる。 これが自分流のブレンドの基本である。 これをもとに苦味を特徴としたブレンド<ジャーマンブレンド(MM)>、 <イタリアン(MH)>、その当時流行った軽いコーヒー<アメリカン(ML)>、 香りを出すためモカを使った<モカブレンド(MB)>などが生み出される。

コンセプトに沿ったコーヒーを造るのに、一番大事なことは原料豆と焙煎である。 原料豆の善し悪しはつかめず、社長のいうがまま使う。 焙煎に関しては小学生の頃から、両親が農家であり、農繁期はいつもご飯を炊いていたので、 そのことを思い出し<始めチョロチョロ中パッパ、チョト蒸らしてハイ上がり> これを母親から聞いて薪でご飯を炊いた事を思い出し参考にする。

記:2004年1月

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