スペシャルティコーヒー豆 AKAGAWA

コーヒーとの出会い

私は1972年にミカド珈琲商会に友人の紹介で入社しました。 別にコーヒーに興味があったわけでもなく、ただ勤め先が都内で寮があった事が理由でした。

そのとき23才で、コーヒーは年に2〜3杯程度飲んだ記憶しかありません。 今もそうですが、当時から生活の一部がお酒でした。 お金に余裕があれば、全て飲む方に回りました。 入社後数日でコーヒーの製造部に手伝いに行かされ、 工場長や先輩達のコーヒーのテスティングの様子を見て、えーっと思いました。

彼らは一杯のコーヒーを飲んで、なんと分析していました。

「このブレンドはブラジルが少し焙煎が浅い。 もう少し強めに煎り、コロンビアの酸が勝っているから10%減らそう。」

と言うような会話が、毎朝のテストで始まり一日の仕事がスタートします。

それまで私はコーヒーとは苦いもので、全てが同じ味にしか感じず、 進んで飲みたいとは思って居ませんでした。 一杯のコーヒーに(酸味、苦味、コク、ボディ、バランス)など ブレンドの内容を瞬時に判断し、ブレンドの配合比率や焙煎度合いが決定されている。 まさにコーヒーメーカーの心臓部である。

はたして経験を積んだら、酒しか飲んだことのないこの俺にも、 先輩達のような味覚、知識、技術が身に付くかどうか、ヨーシ挑戦してみよう。

それから数ヶ月後、工場長はなぜか会社に来なくなり、 そのまた数ヶ月後に先輩も会社を去り、 入社半年で私が製造の責任者になった。 コーヒーの知識や経験を買われてなったのでなく、 ただ闇雲になったのだが、さっぱりコーヒーの味が分からない。 酸味や苦味などは理解できても、出来たブレンドを飲んで不味いのは分かるが、 ではどうしたら良いのかサッパリ分からない。 他の部署に聞いても旨いか不味いかは答えるが、 原料が悪いか、焙煎に問題があるか、配合のバランスか誰も教えてくれない。

ここからコーヒーとの格闘が始まる。 コーヒーはレシピ通りの、原料、焙煎、配合で製造しても、 美味しい物が出来るとは限らない。

それはコーヒーを作る人が、どうゆう味のコーヒーを作りたいのか、 基本理念をシッカリと持つことである。 それに必要な原料は何が良いか、焙煎度合いはどうするか、 配合内容の比率が決まってくる。

でもそれが一番難しい事であり、経験と熟練が必要である。 でも入社半年の私にはそれらは無く、またその為の時間も無い。 毎日がコーヒー人生の始まりである。

記:2003年12月

トップへ次のページ →

inserted by FC2 system